ライフストリーム

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飛行機の離陸前にトイレに行こうとしたらCAさんにキレられた話

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【事件発生】東京発-福岡行 スカイマーク・エアラインズ

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東京発の飛行機、夜の便に乗ったときのことだった。
僕は窓側の席で隣にはギャルが二人。通路を挟んだ向かいの通路側の席には背の高い黒人さんが座っていた。物語は飛行機の離陸前から始まる。

 

 

飛ばない翼


結論から言うと僕はトイレに行きたかった。すぐに離陸するだろうとタカをくくって飲み干したドトールのコーヒー。これがいけなかった。せめて小岩井にするべきだった。
敵は「小」だが、まだ自分の意志でコントロールできるレベルだった。余裕がある。
しかし飛行機は離陸予定時刻をもう10分以上過ぎていた。
一体何があったのだろう、そう思っていたら機長からのアナウンスがあった。

 


ポーン

 


「滑走路めっちゃ混んでるんで、まだまだ飛ばへんで~」

 

 

滑走路が混む!なるほどそういうのもあるのか。
窓からは確かに他の飛行機の翼が並んでいるのがわかった。
人間の体とは不思議なもので、解放の時を先延ばしにされると…
限界も近くなる。我慢が効かない。正直まずい感じだった。

 

 

尊嚴を守る戦い

 

ここで目の前に選択肢が現れた。
今ココで漏らして他の乗客に迷惑をかけテロリストになるのか、一瞬の注目を浴びて問題を解決するか、どちらがいいか?

 


後者に決まってんだろうが!!!!!

 


意を決してベルトを外して、座席を立ち隣のギャルの前を通ろうと「すいません」コールをした瞬間である。

 


「お客様ぁァ!!!!!!!!!!席にお戻り下さい!!!!!!!!」

 


CAさんが遥か後方から叫んだ。テロリストの怪しい挙動を見逃さなかった。
お飲み物などよろしかったでしょうか、なんて甘い声は彼女の本気じゃないのだろう。
普通にブチギレである。CAさんって怒るんだと思った。

 

ふと向かいの席に目をやると、僕が立ち上がったことでトイレに行けると思ったか
黒人さんも立ち上がっていた。

 

「ホーリシッ…」

 

そう言って席に戻った。僕も座った。

 


こうなるともう祈るしか無い。
さっきの騒動で周りの客に「こいつトイレにいくのを我慢していやがる」とバレただろう。問題はそれが小なのか大なのか。液体か個体か。それにより予想される被害範囲と規模は段違いに変わってくる。
隣のギャルが心なしか距離を取った。大丈夫、そっちにはいかないようにするから。

 


覚悟を決めた。

 


考えてみてれば、いや、考えなくてもわかることだ。
僕の選択肢にはもうひとつ足りなかった。それは「命」だ。
飛行機の中というのは、万が一があってはならない場所だ。
事故が起きるリスクを限りなくゼロにするために、ひとつとして
離陸前に席を立ってはいけないのだ。もしも僕の尿意が原因で取り返しのつかない
アクシデントに繋がるのであれば…
漏らした方がマシじゃないか。

 

こんな簡単な事に気付かなかった。きっと向かいの黒人さん…ジョンも同じ事を思っているだろう。目をやると十字を切っていた。
救いにも似た感情に包まれて、薄れ行く意識の中、膀胱のロックを解除しようとした瞬間、ポーンと言う音とともに機内アナウンスが流れた。

 

 

「当機は間もなく離陸します」

 

 

そこから先の事はあまり覚えていない。
重力から解放される感覚がして、街の光が雲の切れ間から見えなくなった頃
CAが何かを叫びながら僕の元までやってきた。ジョンは我先にと走っていた。
彼が入った個室の向かいに僕は入ったような気がする。

 

 

 

終わりよければ

 


「先程は申し訳ありませんでした」

 


CAさんが言った。
最悪の事態も相当していただろう、しかし、彼女にも全うするべき仕事があったのだ。
いいんですよ、と僕は言った。命と引き換えに人としての尊厳を差し出す覚悟はできていた。それでも貴方達は、僕のパンツとジーパンを無傷のまま故郷に送り届けてくれたじゃないか。それに、CAさんに怒られるというのも、その…悪くはなかった。


ありがとう。

 


その名はスカイマーク・エアラインズ。

 


空の線をつなぐ人たち。


僕のプライドをつないだ人たち。


願わくばもう、飛行機が滑走路で混み合うことがありませんように…

 

 

 

皆さん。

 


離陸前に席を立っちゃだめですよ。

 


Fin